90年代までは凶悪犯罪が多発していたニューヨークシティ。ジュリアーニ氏が市長に就任してからは、治安が急速に良くなりました。しかし、特定の地域はいまでも犯罪多発地域として恐れられています。
80年代まではかなりスリリングな街だったNYシティ
今日はちょっと趣向を変えて、私が世界で最も好きな街の一つであるニューヨークシティについて書いてみたいと思います。
私が初めてNYに行ったのは、留学生として渡米した90年代前半でした。
NY行きの前、クリストファー・ウォーケン主演の「King of New York」や、ニューヨークの荒くれ者を主人公とした「ウォリアーズ」を観ていた私は、ニューヨークは危険な香りがするスリリングな街だ、という印象を持っていました。
また、私は、テレビや映画でよく見かけた落書きだらけの地下鉄には是非とも乗ってみたいと思っていました。そして、ニューヨークシティに着いた翌日、私は、意気揚々と宿の近くを走っていた「7トレイン」の駅へ向かったのです。
ちなみに、ニューヨークの地下鉄の系統は全て数字とアルファベットで分けられており、「7トレイン」は、マンハッタンからアジア系住民の坩堝であるクイーンズのフラッシングまで走っています。
まだかまだかと地下鉄を待っていると、ようやくやってきました。しかし、車体を見るとなんと落書きが無いではないですか。他の路線を走っている車両を見ても落書きは無し。その後、大学の友人に聞いてみると、落書き車両は80年代後半に姿を消したとのこと。残念でした。

リンク先の写真から、当時のNYのスリリングさが伝わってきます。これこそが私がニューヨークシティに求めていたものだったのですが、90年代に入るとニューヨークの治安は急速に良くなり、真夜中にマンハッタンを歩いたり、地下鉄に乗っても全く問題なしでした(私の運が良かっただけかもしれませんが・・・)。
しかしながら、特定の地域は今でも犯罪多発地域としてその名を轟かせています。それが、サウスブロンクスとイースト・ニューヨークです。
ヒップホップ発祥の地「サウスブロンクス」
ヒップホップは、70年代にサウスブロンクスで誕生しました。この地域からは著名なR&B系アーティストが育っており、グラフィティもサウスブロンクスが発祥の地です。
また、サウスブロンクスではないのですが、ブロンクス区には田中将大投手が所属していたニューヨークヤンキースのホームグラウンドである「ヤンキー・スタジアム」があります。
YouTubeで興味深い動画を見つけましたので、ご紹介したいと思います。この動画は70年代と80年代のサウスブロンクスを映したものです(戦争後の焼け野原みたいになっています)。
近年、同地域は開発が進んできていますので、現在のサウスブロンクスはかなり様変わりしています。
このように、サウスブロンクスは非常にスリリングな街であることが分かります。私は特別ヒップホップに興味があるわけではないのですが、2年ほど前(2013年)にNYに短期滞在していた時にサウスブロンクス行ってきました。
その際、何枚か写真を撮りましたので、以下にご紹介したいと思います。
以下の写真はパークアベニューです。マンハッタン内ではお洒落なパークアベニューですが、ブロンクスに入ると非常に寂れています。
韓国人が経営する魚屋です。肚の据わった韓国人がいるものです。競合相手の少ない地域でビジネスをするという「ブルーオーシャン戦略」でしょうか。
ちなみに、ニューヨークシティには魚介類のフライを専門に提供するレストランがあります。多くは韓国人が経営しており、私は白身魚のフライが好きで週一くらいで食べていました。
以下はサウスブロンクス名物の「グラフィティ」です。
最後の写真は、“サウスブロンクスのタイムズスクエア”と呼ばれる「The Hub(ハブ)」という場所です。
現在の日本ではあまり見かけなくなったサンドイッチマンですが、ニューヨークシティでは今でもよく見かけます。
80年代と比べて、ずいぶんと安全になってきたサウスブロンクスですが、それでもやはりニューヨークシティの他の地域と比べて犯罪が多い地域であるのは確かです。
しかし、昼間散歩をする分にはそれほどビクビクする必要は無いと思います。特にヒップホップ好きの方にとっては、魅力的に映る街ではないでしょうか。
ちなみにブロンクス区は定冠詞の”The”がついて、“The Bronx”となります。定冠詞が付く理由はあまり知られておらず、同区出身の私の大学のクラスメートに尋ねても「分からない」と言っていました。
かなりヤバイ街 「イースト・ニューヨーク」
さて、今や犯罪発生率ではサウスブロンクスと同等か、あるいは凌ぐかもしれないと言われる超犯罪多発地域のイースト・ニューヨークの紹介です。
サウスブロンクスと違い、この地域は単なる好奇心だけで訪れてはいけません。
たとえ、あなたが「オレは喧嘩が強いんだぜ!」と思っていても、そんな強がりは安全な日本だけで通用することです。いくら喧嘩が強くてもここは避けた方が賢明です。なぜならここはマジで危険な街だからです。
アメリカ3大テレビネットワークの一つであるCBSのニューヨーク版ウェブサイトに興味深い記事が掲載されていますので、ご紹介したいと思います。
NYPD(ニューヨーク市警)の発表によりますと、2015年のニューヨークの殺人事件の件数は、前年度比で16%上昇しており、イースト・ニューヨークが一番の犯罪多発地域としています(参考元:CBS New York)
このようにイースト・ニューヨークは非常に危険な地域ですので、ニューヨークに長年住んでいる人達も訪れようとは思わない場所です(まあ、訪れる理由もありませんが・・・)。
以下の写真は、私がニューヨークに短期滞在していた時、イースト・ニューヨークに実際に行って撮った写真です。
ますは私が降り立った地下鉄の駅の写真です(この地域の地下鉄は高架を走っています)。ここはイースト・ニューヨークに位置する「Sutter Avenue駅」です。
この駅にたどり着くまで地下鉄を何本か乗り換えたのですが、イースト・ニューヨークに近づくにつれて東洋人の乗客は少なくなって行き、最後に乗った「Lトレイン」の車両では、東洋人は私一人だけでした。ちなみに白人の乗客もいませんでした。
次の2枚は駅の構内から撮影した風景ですが、非常に寂れているのが分かります。
以下は駅の外観です。ニューヨークの地下鉄の駅は、概ねどこもこのように汚く、荒れ果てています。ニューヨークシティは慢性的な財政難を抱えているため、駅の改修まで手が回らないようです。
以下の写真は駅のすぐ隣のストリートです。街灯もないこのストリートを真夜中に一人で歩くのはちょっと勇気がいると思います。
低所得者向けのアパートでしょうか。
この地域唯一のチャイニーズ・テイクアウト・レストランです。商魂たくましいといいますか、肚の据わった中国人がいるものです。
次の写真はアメリカ版100円ショップです。アメリカでは「99セントショップ」と呼んでいます。
この辺を歩いていた時ちょっとした事件に遭遇しました。パトカーが何台か止まっていましたが、さすがにパトカーの写真に撮るわけにはいけませんので、少しアングルを変えて救急車を撮影しました。
ちなみに、日本では救急車の利用は無料ですが、アメリカでは有料です。ニューヨークシティでは、日本円にして約3万円以上請求されます。
以上、ニューヨークの犯罪多発地域をご紹介しましたが、前述のCBSの記事によりますと、「borough(行政区)」としてはブロンクス区が最も犯罪率の高い区と紹介されていますが、地域別で言うと、「イースト・ニューヨーク」がニューヨーク一の犯罪多発地域であると紹介されています。
従いまして、今回の記事の主題である「サウスブロンクス VS イースト・ニューヨーク – どっちがNY一の犯罪多発地域?」は、イースト・ニューヨークに軍配が上がる結果となりました。
サウスブロンクスはヒップホップ文化発祥の地でもあり、見るべきものが多くある場所ですが、一方のイースト・ニューヨークは見るべきものが何も無い、ただ単に寂れた街であるというのが私の印象です。再びここに訪れることはないでしょう。